2017クライテリア編集部が選ぶコンテンツ100①
あけましておめでとうございます、クライテリア編集部です。
2016年に引き続き、2017年も『クライテリア』の新刊を出すことができました。2018年は雑誌を出すのみならず、ブログとtwitterの更新を増やし、イベントなども積極的に行えればと思っています。
ところでクライテリア編集部は12月30日に、2017年の面白かったコンテンツを振り返る「2017クライテリア編集部が選ぶコンテンツ100」という放送を行いました。本誌編集委員である遠野よあけ、升本、野村崇明の3人が2017年の面白かったコンテンツを33個ずつ持ち寄り、その全てについて語り合うという狂気の企画です。録画はこちらから(ツイキャスの仕様で放送が30分毎に切れているのですが、30分×6本で計3時間の放送になっています)。
この記事には、野村崇明が選んだ33個のコンテンツのリストと、そのうちいくつかについての大雑把なコメントとを掲載します。各コンテンツの選定理由や細かなコメントは録画をご覧ください。
続きを読む「なんか面白いマンガないかなー」という、あなたへ
真実はいつもひとつ!はコナンくんやけれど、マンガの『名探偵コナン』に「真実はいつもひとつ」は出てこない*1というんは有名な豆知識でして、実際、真実となる回答はひとつではないわけですよ、「なんか面白い漫画ないかなー」への応答は。
でもでも「人によって好みはちがうんやから」と逃げとっても始まりません。応答したい人らーが集まり、集合知でおすすめ漫画を導き出したろ!的な主旨の試みが随所で行われており、10年以上続いている大規模なものだけでも
- 「このマンガがすごい!」(年間ランキングは2006年~)
- 「このマンガを読め」(年間ランキングは2005年~)
- 「マンガ大賞」(2008年~)
- 「全国書店員が選んだおすすめコミック」(2006年~)
などがありまして、「ほいじゃあ、それらにもまだノミネートされてへん漫画を紹介しようやないか」とブログ記事を書いとる途中で「次にくるマンガ大賞」の第3回候補が発表(2017/7/7)。
なぬ、では当然、次にくるマンガ大賞ノミネートのマンガも回避じゃーと思うも、「次にくるマンガ大賞」は候補作が100作もあるうえ、まだ単行本化しとらん作品も候補に入っており、正直紹介文書いてた漫画と一部重なってもうていましたよ。でもそれ以外にも面白い漫画はあるんすよ、ええ。というわけで以下、5作品ほど漫画紹介スタート。あー、そろそろ似非方言やめますね。
*1:似た台詞は出てくる。
そのたびごと、たった一回の普遍――『ハクソー・リッジ』について
今、メル・ギブソン監督の最新作『ハクソー・リッジ』が話題だ。
この映画は、「汝、殺すなかれ」という戒律を自らの信念とする主人公デズモンド・ドス(アンドリュー・ガーフィールド)が、衛生兵として沖縄戦の激戦地である前田高地に立ち、多くの命を救ったという実話を基にしている。敵兵を殺さなければ、自らとその仲間たちがあまりにもあっけなく殺されてしまう戦場において、それでも武器を一切持たず、時には敵をも助けようとするドスの姿は、メル・ギブソンお得意の激しい暴力描写と相まって英雄的な相貌を見せており、沖縄が舞台であることと合わせて、確かに話題となるだけの要素を備えているように見える。しかし今この映画が話題となっているのは、上記のような要素によるのではない。むしろ日本におけるプロモーションが、それらの要素を全て捨象してしまったことによる。
続きを読む批評再生塾、第二回課題全レス
さてさて、前回の記事でちょっと触れたとおり、『クライテリア』のメンバーは「ゲンロン佐々木敦批評再生塾」の 第一期生で、これを書いている横山は現在(第三期)再生塾のアシスタントをしています。というわけで今回はこのスペースを借り、批評再生塾第三期の最初の提出文に対する、全レスを行いたいと思います!なんと合計10000字超え!疲れたよ!!
提出文自体はこちら↓
http://school.genron.co.jp/works/critics/2017/subjects/2/
から読めます。
三期生や批評再生塾ウォッチャーの方はもちろん、批評の良し悪しってなにで決まるの??的な疑問を抱いている方にもオススメ。もちろん100%僕の主観であり、したがって主任講師の佐々木敦さんや出題者の大澤聡さんの評価とは全く無関係ですが、一つの指標くらいにはなるかと思います。
結構頑張ったので是非お読みくださいーm(_ _)m
(横山)
続きを読む『クライテリア』が選ぶ批評入門ブックリスト
批評再生塾第三期が開講するということで、受講生の先輩(一期生)にあたるクライテリアの編集部が、三期生を始めとする批評初読者にオススメするブックリストを制作いたしました!
ざっくりと難易度別に、a=入門(予備知識無しでOK)、b=基礎(やや躓く箇所があるかもだが、抑えておきたいレベル)、c=発展(いきなり通読は厳しいかもしれないが、読むと武器になる)の三段階に分かれています。
各人が「受講生の役に立ちそう」という基準で選んだものであり、いわゆる「必読書」とは若干異なったラインナップになっております。そのため、網羅性を目指したもので無いことは注記しておきます。オーソドックスな必読リストである『ゲンロン1・2・4』収録の「年表現代日本の批評」(むろん座談会自体も必読)や、批評再生塾第一期の記録本『再起動する批評』に収録された「現代批評の系譜チャート」などと併せてご利用することを強く推奨いたします。
なお、各選書には推薦者のコメントが付記されていますが(匿名。コアなクライテリアファンはコメントから推薦者を予想してください笑)、そこには「併せ読むといい一冊以上を盛り込む」という縛りを設けています。つまり選書自体と合わせて七十冊近くの書名が挙がっており、網羅的でないと言いつつ中々ボリュームのあるブックリストになっています。コメントの方に「必読書」が挙がっているケースも少なからずあるので、ぜひこちらもご活用下さい。
観光と政治の狭間で
バングラデシュの南東に位置するチッタゴン丘陵地帯。ここは国内でも有数の観光地である。他よりも少し高い丘から見下ろす眺めは雄大で、人々の心を大きくし、小さな悩み事をかき消してくれる。また、国内最大の人造湖であるカプタイ湖には旅客船が周回しており、湖の上を揺蕩いながら、自身の内面を見つめる時間をくれる。埃と喧騒にまみれたダッカでのストレスフルな生活を癒す絶好のスポットだ。実際に多くのバングラデシュ人がここを観光目的で訪れている。私もよくダッカの知人に「チッタゴン丘陵地帯には絶対に行ったほうがいい。自然がめちゃくちゃ綺麗なんだよ。ほら見てくれよこの景色」とスマホの写真を自慢されていた。
一見すると坂だらけで人の住めるような環境ではないが、未開の地というわけでもない。ここにはチャクマと呼ばれる先住民が多く暮らしている。人口の八割弱がイスラーム教徒のバングラデシュでは珍しく、彼らの大半は仏教徒あるいは無宗教であり、平野部のベンガル人とは異なる独自の文化を形成している。バングラデシュというと、イスラーム教のイメージの強い国であるが、実はチャクマのような先住民があちこちに存在していて、意外と多様性に富んだ国なのである。
今回はチャクマの新年祭に招待されたので、その報告である。しかし、彼らの文化を事細かに紹介するようなことはしない。私がここで書きたいことは、この地に行くことであぶり出される、この土地の目には見えない何かについてである。
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